• 禁煙のサポートをする外来となります。
  • 2006年より禁煙外来に保険適用がなされるようになりました。

担当

担当鈴木秋彦
曜日月曜日~土曜日(木曜日、土曜日午後除く)

禁煙の必要性

 タバコの害や禁煙の必要性に関しては一昔前からしつこいぐらいに耳にすると思います。一昔前までは吸えた場所でも現在は禁煙となっているところは多いです。1998年には飛行機内での喫煙は全面的に禁止されました。2003年のたばこ事業法改正で具体的に健康への危険性を示すことが義務付けられたことから、たばこ包装の注意書きを、「肺がんの原因の1つ」「心筋梗塞の危険性を高める」など、より具体的な表記をするようになっています。このような政府や国民の努力によって、1966年には49.6%だった喫煙率も20%を切るに至っています。

 それもこれもたばこの健康被害が知れ渡ったためです。たばこの煙には200種類以上の有害物質が含まれ、そのうち70種類が発がん物質です。代表的な有害物質はニコチンタール、一酸化炭素です。たばこの健康被害に関しては多くの研究がなされていまして、主要疾患の罹患率に関しては以下のようになっています。

疾患1日20本以下1日20本超
脳卒中1.4倍1.6倍
冠動脈疾患2.2倍3.3倍
末梢動脈疾患3.7倍
腹部大動脈瘤4.0倍
表:非喫煙者と比較した罹患率

 その他、喉頭がん、咽頭がん、肝がん、食道がん、胃がん、大腸がんの罹患率が上がり、慢性閉塞性肺疾患という肺がしぼんでしまう病気に至っては患者さんの喫煙率は90%となっています。喫煙者の死亡率は明らかに高く、非喫煙者の1.64倍と言われています。さらに、副流煙のために喫煙者本人だけではなく、周りにいるご家族やお友達にも影響を与えてしまいます。副流煙は主流煙の数倍もの危険性を持っているという事実は聞いたことがあると思います※。

 こうした被害を防ぐためにも禁煙の必要性は常々説かれています。

※参考文献:宮崎恭一「たばこで他殺、たばこで自殺」女子栄養大学出版部 2000年

禁煙の難しさ

 ただ一方で、禁煙は非常に難しいものであるということも知られています。この理由としてタバコに含まれる有害物質である「ニコチン」の存在が挙げられます。ニコチンを長期間体に取り込み続けていると、「ニコチンがなくてはダメな体」が出来上がってしまいます。これがニコチン依存症です。ニコチンは脳内の腹側被蓋野という場所にあるα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)という神経物質を受け止める部位に結合します。これにより側坐核という場所から快楽物質であるドパミンが放出されます。ドパミンの放出はアルコール依存症でも見られ、仕組みとしては似ているところはあるのですが、ニコチンはアルコールよりもはるかに強い依存性を持っていて、ヘロインと同等とされています。依存が形成された状態ですと、タバコを断とうと思っても離脱症状が出現します。離脱症状を生じる状態を「身体依存が形成されている」と言います。離脱症状は、焦燥感だったりイライラだったり不安感緊張感だったりします。また、中枢神経はニコチンが存在する状態に慣れやすいため、同じタバコの本数や強さでは不十分に感じるようになり、どんどん本数が増えます。これを耐性と言います。この依存と耐性のために禁煙が難しいのです。

タバコ依存度評価表

番号質問回答点数
1起床後、何分ぐらいで最初のタバコを吸いますか?5分以内3
6分~30分2
31分~1時間1
1時間以上0
2禁煙の場所でタバコを我慢するのがつらいですか?はい1
いいえ0
31日の喫煙の中で、やめにくのは?朝の最初の一服1
それ以外0
41日に何本吸いますか?31本以上3
21~30本2
11~20本1
10本以下0
5起床後数時間のほうが、他の時間帯より多く吸いますか?はい1
いいえ0
6風邪などで寝込んでいる時も、タバコを吸わずにいられませんか?はい1
いいえ0
表:タバコ依存度評価(ファガストローム1978)

●合計0~3点=依存度は低い
●4~6点 依存度中程度→これ以上だと禁煙外来の受診は必要と思われます。
●7~10点 依存度高い

禁煙のメリット

上述した種々のリスクが低減されます。以下、時間経過による禁煙のメリットです。

時間内容
禁煙直後副流煙の心配がなくなる。
20分後血圧と脈拍が正常値まで下がる。手足の温度が上がる。
8時間後血中一酸化炭素濃度が下がり酸素濃度が上がる。
24時間後心筋梗塞の可能性が減る。
数日後味覚や嗅覚が改善する。歩行が楽になる。
2週間~3か月後心臓や血管などの循環機能が回復する
1か月~9か月後ぜんそくが改善する。体力ガイア威服する。気道の自浄作用が改善し、感染症にかかりづらくなる。
1年後COPD患者にて肺機能の改善がみられる。
2~4年後虚血性心疾患のリスクが喫煙者と比較して35%低下する。脳梗塞のリスクも低下する。
5~9年後肺がんのリスクが低下する。
10~15年後様々な疾患の罹患リスクが非喫煙者とほぼ同じになる。
表:禁煙後の身体的改善、参考文献:イギリスタバコ白書「Smorking Kills」1998/IARCガン予防ハンドブック11巻,2007

禁煙外来の内容

  • 上記理由のために禁煙は難しいものとなっていますが、少しでもそのハードルを下げるべく禁煙外来でお手伝いをさせていただきます。
  • 期間を定めて経口補助禁煙薬(チャンピックス)を使用してお手伝いをさせていただきます。
  • チャンピックスは脳内のニコチン受容体と結合し、ニコチンが脳に及ぼす影響を和らげます。また、弱い刺激作用を生じさせることで離脱症状も緩和させます。
  • ニコチンの離脱症状は禁煙後1週間がピークとなります。
  • この期間を凌ぐと数か月にわたって症状が散発的に出現する時期が続きます。また、一般的には禁煙後10年ぐらいはニコチンへの欲求は続くと言われており、内服薬だけでなく生活習慣の改善(タバコの習慣をなくした生活習慣)も重要になってきます。

禁煙外来の保険適用

以下の4条件全てに当てはまる方は禁煙治療が保険適用となります。

  1. ただちに禁煙しようと考えている方。
  2. 禁煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の方。
  3. ニコチン依存症のスクリーニングテストでニコチン依存症と判定された方。
  4. 禁煙治療についての治療を受けることを文書により同意した方。

ニコチン依存症スクリーニングテスト










以上の項目で合計チェック数が5個以上は、ニコチン依存度が高いと判断され保険適用の対象となります。