レビー小体型認知症は、脳の中にレビー小体というたんぱく質ができて、脳の神経細胞を変性させてしまう病気です。
疫学
- アルツハイマー型認知症よりも発症年齢は若く、一般的には65歳以上の方に多く見られますが、40~50代の方の発症も少なくありません。
- 認知症の原因疾患のうちの5%を占めます。
- 男性に多い疾患であり、女性の2倍の患者数と言われています。
症状
- 幻視、動揺性の認知機能、パーキンソン症状をレビー小体型認知症の中核症状と言います。
- レビー小体が大脳皮質に広く現れるともの忘れが出現し、大脳の下の脳幹部分に現れると振るえが起きたり筋肉がこわばって歩きにくくなるなどします。
- レビー小体型認知症の症状として、注意力の低下や視覚認知の障害、記憶障害などの認知機能障害がありますが、初期には記憶障害は目立たず、一般的な認知症だと認識されないこともあります。
- 特徴的な症状としては、いるはずの無いものがはっきりと見えるといった幻視や夜間の大きな声の寝言、意識状態の変動が挙げられます。大きな声の寝言はレム睡眠行動障害と言って、認知症に罹患するだいぶ前からその徴候が見られる人も多いです。軽度の場合は寝言程度になりますが、重症になってくると布団の中でずっと会話をしていたとか暴れたりといった症状を認めます。
- 意識状態の変動のために「ぼんやり」しているときと「はっきり」しているときの差が激しくなります。時に興奮状態に陥ることもあります。
- 興奮を抑えるために使用する抗精神病薬に対して過剰に反応してしまう、副作用が強く出てしまうことがあります。これは、中脳の一部を示す神経核である在するドパミントランスポーターの密度が低下することが原因です。密度が低下したトランスポーターはドパミンをできるだけ多く受け止めようとしてその感受性を最大限にアップさせます。そうすると、たとえ少量のお薬でも過剰な反応が出てしまうのです。
- 上記ドパミントランスポーターの脱落のために、動きが遅くなる、手が震える、転びやすくなるといったパーキンソン症状も早期に出現します。この症状のため、レビー小体型認知症の患者さんはアルツハイマー型認知症の患者さんの10倍転びやすいと言われています。
- 自律神経症状も特徴的で、たちくらみや失神、暑い寒いといった感覚障害が出現します。また、レビー小体型認知症の前駆症状として便秘が挙げられ、最も早い前駆症状とも言われています。
- 発症初期には抑うつ的になりやすく、うつ病を懸念して受診されるケースもあります。
- 嗅覚障害は臨床診断基準には上げられていませんが、レビー小体型認知症の前駆症状として特異度の高いものです。患者さんは「10年ぐらい前からにおいに鈍感になった」と話すこともあります。
- 平均罹病期間はアルツハイマー型認知症よりも短く、長くて7年程度と言われています。
検査
- 認知機能検査と頭部CTがメインの検査となります。
- アルツハイマー型認知症と比較すると記銘力や見当識が保たれ、内側側頭葉の萎縮も目立ちません。
- より専門的な検査ではMRIやSPECT検査、MIBG心筋シンチグラフィというものがあります。
治療
- 薬物療法では、1.認知機能障害に対して、2.幻視や妄想に対して、3.パーキンソン症状に対しての3パターンが行われます。
- レビー小体型認知症の患者さんはアルツハイマー型認知症の患者さんよりもさらに脳内物質のアセチルコリンが低下しています。そのため、アセチルコリンをはたらかせる作用のあるお薬は非常に有効になります。これは、上記1に該当します。
- 2のお薬は、薬剤過敏性のために過剰に副作用が出る場合もあります。そのため慎重に投与させていただきます。
DLBセルフチェック
DLB check sheet
以上の項目で5個以上該当すればレビー小体型認知症が疑われます