睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何らかの原因によって無呼吸を生じてしまう疾患群です。SASは、閉塞性(OSA)と中枢性(CSA)に分けられます。閉塞性は気道(空気の通り道)の閉塞などが原因で、中枢性は気道は閉塞しないけど脳機能の異常などで無呼吸を呈する疾患です。SASと診断される方のほとんどは閉塞性睡眠時無呼吸となります。当院では閉塞性無呼吸(OSA)を治療対象としております。
OSAの疫学
- 日中の眠気を伴うOSAの患者さんは3~7%程度存在すると言われていますが、眠気のない患者さんも多くいらっしゃいますので、実際のOSAの患者さんはもっと多いと言われています。
- 潜在患者数は男性の9%、女性の4%で、男女比は2:1程度です。
- 年齢とともに有病率は上昇しますが、高齢の方になると横ばいになります。
原因
- 中等症から重症のOSAの60%は肥満が原因とされています。
- 体重が正常の場合はあごの形や扁桃腺の肥大などが原因となります。下あごの小さい方ほど気道が閉塞しやすい傾向があります。そのため、遺伝的な要因も関係しており、ご家族にいびきが目立つ方がいらっしゃる方はOSAの可能性は上がります。
- 女性の方の場合は閉経が危険因子となります。
- また、悪化要因としては、就寝前の飲酒や睡眠薬の服用、鼻炎も挙げられます。
OSAの症状
- ご家族がいびきや無呼吸に気づいて指摘することはありますが、自覚症状のない方が非常に多いです。
- 朝の疲労感や昼間の眠気を感じる方もいます。昼間の眠気に関しては、リラックスしているときに顕著に現れます。「仕事の昼休みに眠くなってしまう」といった訴えも多く聞かれます。
- 睡眠の質が低下することによって日常生活の質も低下してしまいます。
- 無呼吸により全身疾患の合併が有意に高くなることが実証されています。いくつか例を上げますと、以下のようになっております。
疾患 | 健常者と比較した罹患率 |
---|---|
脳血管疾患 | 3.51倍 |
虚血性心疾患 | 2.54倍 |
心不全 | 4.30倍 |
2型糖尿病 | 2.29倍 |
高血圧症 | 2.14倍 |
SASは肥満に伴う生活習慣病やメタボリックシンドロームと密接に関連し、高血圧や脂質異常、耐糖能異常を効率に合併します。また、夜間頻尿や性機能障害、妊娠高血圧症候群にも関係があります。
OSAの診断
- 問診と無呼吸を測定する検査によって診断します。
- その際に「AHI」(無呼吸低呼吸指数)という指標が重要になります。AHIは、睡眠中1時間当たりの無呼吸低呼吸の回数になります。
- 診断に際して、AHIが15以上であるか、身体症状+AHI 5以上となれば、睡眠時無呼吸症候群と診断をつけることができます。
- AHIを測定するためには終夜睡眠ポリグラフ検査が必要になります。この検査は1泊入院が必要な検査で、AHI以外にも脳波や足の動きなども測定することができます。
- ただ、会社勤めの方には1泊入院は大きな負担になります。そうした事情を考慮して、近年では簡易型無呼吸測定デバイスが進化しています。これは入院しなくとも自宅で無呼吸の頻度や睡眠の状態を評価することのできる機器です。脳波や足の動きを検知できなかったりするデメリットはありますが、社会生活との相性は抜群であり、当院でも簡易型デバイスを採用しております。
- 以下、アメリカ睡眠学会の診断基準を引用しました。
AとBのどちらも満たす、もしくはCを満たすことで診断できる
A.下記項目が1つ以上該当。
- 患者が眠気、爽快感のない睡眠、疲労、または不眠を訴える。
- 患者が呼吸停止、あえぎ、または呼吸困難で覚醒する。
- ベッドパートナーや他の人が、患者の習慣性のいびき、呼吸中断、またはその両方を確認する。
- 患者が高血圧、気分障害、認知機能障害、冠動脈疾患、脳血管障害、うっ血性心不全、心房細動、もしくは2型糖尿病と診断されている。
B.終夜睡眠ポリグラフ検査※(PSG)もしくは簡易検査(OCS)により、以下の所見を示す。
- PSG検査においては睡眠1時間あたり、簡易検査においては検査時間1時間あたりで、5回以上の主に閉塞性の呼吸イベントを認める。 →AHIが5以上
C.PSG検査もしくは簡易検査により以下の所見を示す。
- PSG検査においては睡眠1時間あたり、簡易検査においては検査時間1時間あたりで、15回以上の主に閉塞性の呼吸イベント(無呼吸、低呼吸もしくは呼吸努力関連覚醒反応)を認める。
- AHIにより重症度分類がされます。
重症度 | AHI |
---|---|
重症 | 30以上 |
中等症 | 15~30 |
軽症 | 5~14 |
正常 | 5未満 |
OSAの治療
現在、中等症以上のSASに対しては、nasal CPAP(経鼻持続陽圧呼吸)法が第一選択として用いられています。AHIが20以上であればCPAP両方の適応となります。それ以下の無呼吸症候群に対してはマウスピースの装着が推奨されています。
OSAセルフチェック
2.そのほかの症状はありませんか?
3.病気で困っていませんか
SAS check sheet
以上の項目で1.夜の項目に2つ以上チェックがあり、他の項目にも該当事項があるならば睡眠時無呼吸症候群が疑われます。
診療の流れ
1.電話、外来受付にて診察予約。その際は、月曜日午後、金曜日午後、土曜日午前中の枠をお取りください。
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2.診察日にご来院いただき、「睡眠外来専用問診票」にご記入いただきます。
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3.医師の診察を受けていただきます。
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4.診察の結果、検査の必要性がありましたら自宅にて無呼吸の程度を評価できる簡易型デバイスを使用していただくため、その説明をいたします。
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5.簡易型デバイスをメーカーからご自宅へ郵送します。
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6.一晩装着して無呼吸の測定をしていただきます。
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7.簡易型デバイスは患者様によりメーカーに返送していただきます。
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8.次回診察時、測定結果をもとに無呼吸の程度を評価し、CPAPの適応を検討します。
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9.CPAPの適応となりましたら、メーカーから自宅に郵送させていただきます。使用法はメーカーの担当者にてフォローさせていただきます。
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10.毎月1回の診察にてCPAP治療の効果を評価していきます。