• アルツハイマー型認知症はアミロイドβという異常なタンパク質が脳の神経細胞に溜まり、神経細胞を破壊して脳が萎縮することにより発症するといわれています。

疫学

  • 認知症の中では最も多く、認知症の患者さんの7割程度がアルツハイマー型認知症と言われています。
  • 65歳以上の発症を晩発型、65歳未満の発症を早発型と呼んでいます。一般に、発症が早いほど進行が速くなります。
  • 女性に多く、女性の患者さんは男性の1.4倍となります。

症状

  • 患者さんはにこにこして穏やかですが、少し前の出来事を覚えていなかったり、覚えていないことを悟らせないように取り繕いながら話すことが特徴的です。
  • 大脳のうち側頭葉の内側にある「海馬」が選択的に委縮します。この海馬は記憶に関わる器官であり、日常的な出来事や勉強して覚えた情報は、海馬の中で一度整理整頓され、大脳皮質に貯められます。新しい記憶は海馬にあり、古い記憶は大脳皮質に貯められます。しかし、海馬の働きが悪くなってしまいますと、新しい出来事を覚えることができなくなってしまいます。
  • 記銘力障害を皮切りに緩徐に発症し、段取りが立てられない、気候に合った服が選べないといった遂行障害や、日付や場所の感覚が失われる見当識障害が加わってきます。
  • また、怒りっぽくなる、意欲がなくなる、事実でないことを言う(妄想)といった行動心理症状(BPSD)も徐々に出現します。ただ、BPSDは個人差があります。
  • 妄想に関しては「もの盗られ妄想」が特徴的です。記憶の3STEPのうちの「記銘」ができないために、大切なものをしまったことさえ忘れてしまいます。そこに思考力の低下も加わるため、大切なものが「盗まれた」と思い込んでしまうのです。時にものとられ妄想のために興奮状態となる患者さんもいらっしゃいます。
  • 平均罹病期間は8~10年と言われています。ただ、高齢の方の発症の場合は進行が遅く、罹病期間が長くなります。

検査

  • 認知機能検査と頭部CT、MRIが中心になります。当院では認知機能検査とCT検査を実施できます。頭部画像検査で特定部位の萎縮があるかどうかを確認します。
  • 近年、採血でもアルツハイマー型認知症の検査が可能ですが、保険適応はなく自費になります。この採血ではアルツハイマー病の重要遺伝子APOE遺伝子の型を調べて、認知症の発症リスクを推定します。APOE4型を2本持っている人は、認知症のリスクが15倍高まります。(日本人の2%)
  • 専門の病院では脳血流シンチグラフィという検査も行うことができます。CTやMRIではとらえることのできない脳血流を評価します。アルツハイマー型認知症では健常者に比べ、後部帯状回、楔前部の血流が低下します。この変化は、軽度認知症の段階でも起こり、これをとらえる事で早期段階での治療の開始が可能となります。

治療

  • 2021年6月に米国食品医薬品局の迅速承認を受けたアルツハイマー病の治療薬「ADUHELM™(一般名:アデュカヌマブ)」は、Αβの脳への沈着を低減する効果が認められており、アルツハイマー病の病理に作用する初めての治療薬として、大きな期待が寄せられています。