• 前頭側頭型認知症とは、前頭葉から側頭葉前方を中心にして以上たんぱくの出現や萎縮が起きる認知症の一つのタイプです。
  • 認知症の原因疾患のうち1%を占めます。
  • 50~60代で発症し、他の認知症と比較すると若年発症傾向です。
  • 性差や家族歴は明確ではありません。ただし、欧米では3~5割に家族歴が認められています。
  • 2015年より指定難病に指定されています。
  • 似たような言葉に「前頭側頭葉変性症」という疾患概念がありますが、前頭側頭型認知症は前頭側頭葉変性症のうちの一つとなります。
図:前頭側頭葉変性症の概念
  • ちなみに、障害される脳領域の部位は以下のようになります。
図:前頭側頭葉変性症の障害部位

主に前頭側頭型認知症について解説します。

症状

  • 前頭葉機能低下による感情や行動障害と側頭葉機能低下による言語障害が中心になります。
  • 初期には記憶障害は目立たず、怒りっぽくなったというような人格変化や同じことを繰り返すといった常同行動が目立ちます。
  • 常同行動は、毎日同じコースを散歩するといった常同的周遊や同じ時間に同じことをきっちり行う時刻表的生活が認められます。
  • 脱抑制と言って、自身を制止する力が効かなくなるために他の人からどう思われようと気にしなくなります。その結果、万引きや痴漢などの反社会的な行動が出てくる場合もあります。注意されても悪いと思わず、また同じことを繰り返してしまいます。
  • 見当識は保たれているため、周遊しても初期には迷子にはなりません。
  • 病初期には脱抑制のために活発に見える患者さんも、病気の進行とともに意欲が減退して無関心が目立ってきます。場合によっては、無欲型といって、比較的初期から無関心自発性の低下が目立つ場合もあります。
  • 被影響性の亢進と言って、外部からの刺激に対して何も考えていないような反射的な返答や応答が目立ってきます。
  • 集中力や関心が続かず、興味がなくなると周囲の様子を気にせずその場からいなくなってしまうことがあります。これを立ち去り行動と言います。

治療

  • 前頭側頭型認知症に対して特異的な治療法は解明されていません。
  • 対症療法が中心となります。
  • 抗うつ薬の一種であるSSRIが脱抑制や常同行動、食行動異常等に効果があるとの報告が増えています。