疫学

  • 片頭痛の患者さんは日本で840万人もいると推定されています(1)。そのうち、片頭痛のために医療機関を受診した方は3割程度となっていまして、病院へ行かずに悩まれている方も多いというの現状です。

病態

  • 少し難しい話ですが、脳内でどのような変化が起きて片頭痛を引き起こしているのかという研究は古くからされてきました。
  • 色々な説が言われてきましたが、現在支持されている説は「三叉神経血管説」です。これは、頭蓋内に分布している三叉神経という顔の感覚を脳に伝える末梢神経の一つが何らかの刺激によって興奮して片頭痛発作を起こすという説です。
  • 患者さんの症状の出方を考えると最も信憑性のある説ですが、「何らかの刺激」が何であるのかははっきりしていません。

症状

  • ズキズキと脈打つような痛みがあり、動くことも難しい」というような症状があります。
  • 主にこめかみから前頭部が発作的に痛みます。発作は4~72時間続くとされています。
  • 片側に痛みが表れることが多いですが、両側に現れることもあります。「片」の文字が使われていますが、両側に症状を有する患者さんは4割と言われ、決して珍しいことではありません。
  • 片頭痛をお持ちの方の76%に何らかの誘発因子が存在すると言われています(2)。そのうち、ストレスが8割近くになり、女性では月経(65%)、食事がとれなかったとき(57%)、気候(53.2%)であったという研究があります(2)。
  • 症状の経過としては、予兆期→前兆期→頭痛期→寛かい期→回復期となります。つまり、頭痛発作の前には予兆期と前兆期が存在します。
  • 片頭痛と前兆に関してはその関係性はよく言及されます。前兆とは、頭痛発作の直前に起こるか可逆性の神経症状です。5~20分程度であり、長くても60分を超えません。代表的な前兆は閃輝暗点であり、視野にギザギザした光が現れて拡大します。その後暗点が現れ頭痛が始まります。およそ7割程度の患者さんに前兆を認め、さらにその中で光過敏は73%、音過敏は88%、吐き気は51%認められたという研究があります(3)。他の前兆としては、嗅覚過敏や複視もあります。
  • 前兆の前には予兆があり、あくびや倦怠感、むくみなどがあります。予兆は頭痛発作の数時間から数日前に生じます。
  • 前兆開始から15分以内に54%の患者さんに片頭痛の診断基準を満たす頭痛を認めています(4)。

治療

  • 片頭痛の治療に関しては、急性発作に対しての対処と予防療法を併用します。
  • 急性発作に対しては、NSAIDSやトリプタン製剤を用います。
  • 発作が月に3~4回以上生じるとき、頻度が少なくても重症度が高く持続が長い場合、月経前など予想がつく場合などは予防療法の対象となります。 

参考文献

  1. Sakai, F et al., Cephalagia, 17(1), pp.15-22
  2. Kelman L : The triggers or precipitants of the acute migraine attack. Cephalalgia 27 ; 394-402, 2007
  3. Launer LJ, Terwindt GM, Ferrari MD : The prevalence and characteristics of migraine in a poplation-based cohort : the GEM study. Neurology 53 : 537-542, 1999
  4. Hansen JM, Lipton RB, Dodick DW et al : Migraine head-ache is present in the aura phase : a prospective stjdy. Neurology 79 : 2044-2049, 2012